106 S16 は、当時フランスでは「パリの小悪魔」と呼ばれていました。キビキビと小気味よく走るその姿が小悪魔的に見えるためについたキャッチフレーズなんだと思います。まさに106S16にはピッタリですね。
姿を見ているとなんとも可愛らしい形をしていますが、いったん走り出すと大排気量を追い回すほどの戦闘力を備えた車で、プジョー独特の足回りの素晴らしさは当然のことながら、ボディーバランスの素晴らしさが天下一品。誰でもハッキリと感じとることができます。「走りが楽しい!」そんな言葉がピッタリのクルマと言えるでしょう。そんな106S16は、1tを切るボディーに120PSを発生する高回転型DOHCを組み合わせ、このクラスのベンチマークとも呼ばれる性能を誇っていました。
今回は、そんなプジョー106をご紹介いたします。
Peugeot 106
104以来、1シリーズの復活を遂げた106。パリの小悪魔と呼ばれた106は、新世代プジョーとして、生まれ変わりました。
'88年に104の生産が中止されてから3年後、'91年のフランクフルト・ショーで、6シリーズのトップバッターとして、プジョー106は発表されました。
ボディーサイズは、ホイールベース2385mm(205とほぼ同じ)、全長3564mm×全幅1575-1607mm×全高1360-1369mm。非常にコンパクトといえるボディーサイズでしたが、外見から想像するより以外に広く、十分な室内空間を実現していました。これは、ボディーの4隅にタイヤを配置したのが大きく室内の広さに貢献しています。
この106は、当初、2ドア、5人乗りでデビュー。兄弟車のシトロエンAXと共通の直列4気筒SOHCエンジンを搭載していました。排気量は、954cc,1124cc,1360ccの3タイプのエンジンがあり、最高出力/最大トルクは、それぞれ、45HP/7.25kg-m、60HP/9.1kg-m、75HP/11.8kg-mでした。1360ccのタイプのエンジンには、ボッシュ製モトロニック・インジェクションを装着。100HP/12.5kg-mを発揮するスポーティーバージョンも発売されています。
メカニズム的には、シトロエンAXと共通な部分も多く、サスペンションは、フロント/マクファーソン・ストラット+コイル、リア/トレーリング・アーム+横置きトーション・バー、4輪独立懸架、ステアリング形式/ラック・アンド・ピニオン、ブレーキ形式/前輪ディスク・後輪ドラムでした。しかし、スポーティーバージョン(100HP)のみが、ブレーキ形式/前輪ベンチレーテッド・ディスクとなっています。
グレードは、XN(954cc)、XN・XR(1124cc)、XR・XT(1360cc75HP)、XSi(1360cc100HP)の6種類がありました。
'92年に5ドアの954ccと1124ccの2タイプが追加されています。その後、4気筒SOHCのディーゼルエンジン5・3ドア(1369cc,50HP/8.4kg-m)もラインナップに入れられています。
日本導入は、SOHC8バルブのXSiが販売されています。その後、DOHC16バルブを持つS16へ。1tを切る軽量ボディー、120PSを発生する高回転型ツインカムエンジンを組み合わせ、正統派ホットハッチとして、絶大の人気を誇っています。
人気を誇った106は2003年までで、2,789,246台を生産しました。そして、2005年の107へと時代が移っていくこととなるのです。