○ 伝統の継承と新たなデザインプジョーの伝統の足回りは、トレーリングアームにある!と言っても過言では無いと思います。当時としては斬新なデザインであった206は、フォルムばかりに話題が注目されがちです。一方、走りの面で言うと今までのプジョーの伝統をしっかりと受け継いだクルマと言えるのです。
特にリアのサスペンションは、205・106・306と受け継がれてきた横置きのトーションバー+トレーリングアーム式のリアサスペンションを採用しています。そのサスペンションは、スペース効率に優れる反面、スタビリティという点においては完全に一世代前の設計でした。
この形式の足回りは、伸び側のストロークが極端に短いため、コーナーリング時にはイン側のタイヤが浮き上がりやすく、オーバーステアを示しやすい傾向にあるのが一般的です。しかし、プジョーは、この性格を利用し特にスポーツモデルでは、わざと限界域でリアを振り出しやすい(お尻を振る)ファンな特性を生み出しています。まるでFR車みたく。。。そのプジョー独特のFFらしかなる特性は、走り好きなファンからは熱狂的な支持を受けることとなりました。
206になると熟成もさらに進んでいます。プジョーのコダワリ!であるオイル式ダンパーの絶妙なセッティングにより、ハードなコーナーリングをしてもかつてのトリッキーさは影を潜め、穏やかな過度特性へと仕上げられています。一般的なストラット式のフロントはもちろん、構造的にストロークが不足しがちなリアサスペンションにおいてもしなやかなストローク感を生み出し、路面の凹凸を柔らかくいなす「猫足」といわれるあの走りの伝統がしっかりと206に受け継がれているのです。
しかし、この足周りは、206が最後となり、7世代(21世紀)からの7シリーズにおいてはリアサスペンションはトーションビーム式+コイルスプリングのより現代的なサス形式へと変更されていきました。
クルマとして、どちらが優れているのか。それは、新しいものに決まっています。しかし、運転の楽しさは?と聞かれると、間違いなく20世紀のプジョーではないかと思う私がここにいます(笑)。古きよきプジョーの思想が好きだから・・・。
次回は、206モデルの歴史をお送りします。つづく・・。